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世界へ挑戦する者たち

  • 木下 真範

    営業本部
    マーケティンググループ
    エンジニアリングチームリーダー

  • 長船 翔一

    営業本部
    マーケティンググループ
    海外マーケティングチーム

Introduction

グローバル展開の足掛かりとなる海外営業は2015年、中国の日本食レストランチェーンが新たに建設する大規模な食品生産工場で、食品加工機械の納入や工場レイアウトのエンジニアリングなどのトータルサポートを提案、受注に成功した。食文化やビジネス感覚のギャップを乗り越えていった海外営業の活躍の軌跡を、辿ってみよう。

「なんつねにすべてを任せたい」との期待に応えるために

始まりは、一通の「よくわからないメール」だった。

「スライサーと野菜の洗浄機、うなぎの焼成機。大型機械の見積もりをお願いします」

2014年の秋、中国子会社の営業担当から届いた問い合わせに、長船は「一体、何に使うんだろう?」と感じたことを覚えている。食肉機械を含む食品加工機械は通常、「誰が、何のために、どれだけの生産・処理能力を求めているのか」が明確になって、初めて見積もりや仕様検討が可能になるからだ。当時、長船が所属する海外営業は、チームとして独立しておらず、エンジニアリングチームの中にあり、すでにベトナムで大型機械の納入と工場レイアウトの設計・コーディネートによる工場づくりの実績を残していた。だが中国ではまだエンジニアリングの実績は少なく、「話は大きいけど、実現性はどうなんだろう?」と長船が受け止めたのも、無理のないことだった。

見積もり提出後はしばらく進捗報告もなく、そのまま立ち消えになったかに思えた。だが数か月後に突然、再びメールが届いた。

「納期は、いつ頃になりますか?」

この時、長船は初めて検討が具体化しつつあることを知る。そして、それからの動きは素早かった。お客様が上海を中心に日本食レストランチェーンを展開していること。従来は仕込みから調理まで店舗に任せていたスタイルを、新工場による集中生産(セントラルキッチン方式)の仕組みに変え、業務負担の軽減と生産性の向上、調理のスピードアップを目指していること…。必要な情報を一つひとつ確認し、生産能力や仕様などお客様のニーズを掘り下げ、提案内容を具体化していった。

「お客様からは大きく分けて、2通りの要望があります。第一は、こんな工場をつくりたいから、それに合う機械が欲しいというケース。第二は、この機械を使えば、どんな工場で何ができるかを教えてほしいというケース。今回は後者で、「なんつね」にすべてを任せたい、というオファーでした」(長船)

食品機械メーカーとして、機械製品を売るだけでなく、食づくりのプロセスにも付加価値を生み出し提供するのが、エンジニアリングチームのミッション。その第一歩はいつも「現場を知る」ことから始めるのが鉄則だ。長船はすぐに中国・上海へ飛び、建設中の新工場を訪問する。スライサーや野菜洗浄機の大型機械は、カスタマイズの別注品ではなく既製品の仕様で十分にニーズを満たせると判断。そのうえで、必要な機械設備と生産ラインの最適な配置レイアウトなど、工場の全体設計図を描き出していった。

「必要な機械の選定はお客様が済ませていたこともあって、思った以上に契約までスムーズに進みましたね。中国では契約後にトラブルになる事例も多いと聞いていたので、写真や動画、文書など、できるだけ目に見えるカタチで情報を共有し、ミスコミュニケーションが起きないようにも心がけました。日本での生産ラインのエンジニアリング実績を高く評価いただけたことも、嬉しかったですね」

海外が「特別」ではなく「スタンダード」だと考える

契約から半年後の2015年、長船はエンジニアリングチームのリーダー・木下真範とともに、完成間近の工場を再訪する。だがそこには、信じられない光景にただ唖然とする二人の姿があった。

「何で、あるはずのない部屋ができているんだ?」

生産ラインからつながるはずの包装室が仕切られた別室にされ、ないはずの排水溝がつくられ、最短距離だったはずの電源が遠く離れた場所に…。当初のレイアウト設計とは異なる姿が、工場にいくつも出現していた。

「包装室は、中国の法律で別室にする必要があったようなんですが、それ以外にも設計通りでないところがたくさんあって…。私たちが現地へ行って初めて気づき、工場の責任者に問いただしても『そうなんですよ』と答えるだけ。中国に限らず海外のお客様とは、必要と思うことにギャップがあるな、と改めて実感しました」(木下)

もちろん、驚くだけで終わらすことはできない。問題は別室に区切られた包装室に、大型の包装機械が入らないことである。急遽、木下と長船が現場で変更レイアウトを設計し、機械は1℃と表示されるようにしたりと、一部を解体し再組立することで、事なきを得た。また、肉の切断は1℃が最適と説明しても、マイナス20℃の冷凍肉の表面だけに水をかけて「ほら、1℃になった」と笑う工場の作業員など、日本の食品工場の現場では想像できない考えや行動があることを、それぞれに痛感させられた。

「私たちも、国内以上に想像力を豊かにしないといけないな、と」(長船)

「ただ、改めて感じたのは、日本がスタンダードで海外が特別なのではなく『海外がスタンダードなんだ』と考えることが大事だな、と。それは結局、日本のお客様に対しても、より安全で品質を向上した価値を提供できることにつながりますから」(木下)

異なる「顧客満足」に、根気と臨機応変で多様なサポートの実現を

想定外の出来事も乗り越えて2016年、新工場は無事に操業を開始する。お客様の狙い通りに日本食レストランの各店舗の生産性は向上し、さらに新店舗も増えようとしている。

「中国では過去最大のプロジェクトとなった今回の成功が、そのまま現場も人も異なる他のお客様に横展開できるわけではありませんが、大規模案件の実績として大きな意味があります。海外ではまだ『なんつね=スライサーのメーカー』としての知名度が先行していますが、『エンジニアリングも頼りになるんだ!』という認知度が高まっていくきっかけになろうとしています」(木下)

機械を売るだけで終わらずに、そこから一歩踏み出して臨機応変に最適なレイアウトの現場づくりにも貢献できることは、「なんつね」の大きな強みだ。例えば、1分間に300枚の肉を切る食肉機械も、そのスペックだけで生産量やコストをシミュレーションすると、やがて計画と現実とのギャップが生じてしまう。作業員の肉の投入や取り出しに時間がかかれば、300枚の処理能力を発揮することは難しくなるからだ。「なんつね」が「現場を知る」ことにこだわる理由が、そこにある。一方で、エンジニアリングのグローバル展開にはまだ、乗り越えなければならない壁がいくつもある。それぞれの国の文化や気質に合わせることも、その一つだ。中国を例に挙げるなら、骨付き料理が多く、骨がついたまま安全に加工できる食品機械の開発や、また営業提案でも「これでもか!」という貪欲な値引きの要請にもお人よしにならず、正しい価値を正しい価格で堂々と交渉する態度が、必要になる。

「日本では機械の納入から設置、作業テスト、説明、質疑応答など、丁寧なプロセスで4時間ぐらいかかります。でも海外では『長すぎる。どこを押せば動くかがわかれば、それでいい。』という感じですから」(長船)

「確かに、求められる価値に違いはありますね。ただ、そもそも機械は使うほどに何らかのイレギュラーが発生するもの。それに根気よく、また臨機応変にサポートするのは、私たちが得意とするところですし、海外展開でもその『根気』と『臨機応変』は大事な要素。機械の選定からオペレーション、レイアウト、現場の管理方法に新商品づくりまで、多様なサポート力が求められるなかで、いかにシンプルに伝え、実現していくか。それがこれからの海外営業チームの進むべき方向性です」